■Tさん (2級。2013年12月10日)
--2級への進級、おめでとうございます。
ありがとうございます。
--しっかり基礎を固めて、舐めるように隅々まで確認して進級されたので、前途有望だなと思っています。2級に上がられた感想はどうですか?
1級だけでも表現は広がるかなと思います。ある程度の会話ができるのは実感できます。
--Tさんがこの教室に来られる前の韓国語の学習歴はどうでしたか?
ほぼゼロに等しいです。ここに来る前に参考書を買って勉強しましたが、実質1ヶ月ないくらいですね。カナダラが読めるか読めないか程度。
--どうやって「りんどうむくげ」を探し当てられたのですか?
会社で年1回の語学研修の募集があり、各国語がある中で韓国語もありました。通学タイプ、先生を呼んで4~5人でやるグループタイプ、それから通信教育、この三つがありました。私は話すこと主体でやりたかったのですが、通学タイプは中級者以上という条件付でした。そのため先生を呼ぶグループタイプでやろうと思っていました。第二希望として、本意ではないが通信教育を選びました。ところが韓国語の人気が無く、応募者が少なかったので、韓国語を受けたい人は通信教育だけになってしまった。自分は「話したい」というモチベーションがすごく高かったので、インターネットで調べていくうちに、ここに当たったんですよ。
最初に体験入学もできるということだったので、まずどんなものだろうかと来てみました。そのときに私はカナダラしかわからなかったので、1級の一番最初に出ている「ア、タ、キャ」を先生に教えていただいて、それを真似して言う練習が一番最初。「ここならば、自分が話したいと求めていたことがある」と思い、通うようになりました。
--会社からの帰り道ではないですよね。それでもここを選んだのは、なぜですか?
ただ単に「話す」だけなら、同じ金額で、会社の近くの喫茶店でネイティブの人と1時間単位で話しをする、ということもできました。しかし実際、ネイティブの人たちがどれくらい日本語のことがわかるか。細かい表現やニュアンスは、日本語母国者でないと絶対わからない。「日本語母国者が先生」と自分のなかで決めていました。そこでインターネットで調べるうちに、値段的な部分と、体験レッスンを受けてみて自分が望む学習方法だなと思って決めました。自宅とは反対方向とはいえ(笑)、そこは惜しまず、「来週から来ます」と即決しました。
--実際にいつから始められましたか?
去年の7月から始めました。
--1年半、通学してみて、いかがでしたか。
ちょっとずつ表現力が付いてきたのが実感できたのと、勉強の仕方・コツがわかったのが大きいですね。「口に出した分だけ、身になる」がこの1年半で一番実感したことです。
--そこはポイントですね。
「口に出した分だけ、身になる」、それを先生に教わりました。読んでいるだけでもダメ、聞くだけでもダメ。やはり口に出さないとダメなんだ。読む(見る)だけでも、読めるようにはなるかもしれない。しかしいざ口に出すと、正しい発音は出てこない。それは言い慣れていないのが原因。何度も口に出して言うと、自然に言えるようになる。それが実感できました。
--Tさんの場合、私が授業で伝えたことをきっちり実践されていると同時に、通勤途中でもいろいろ努力されている。そこを具体的に教えてくれますか。
通勤中は、次の課のCDを聴きまくり、それをブツブツ唱える。帰りは自分が習った表現をランダムにして、何度も聴いて、それを日本語訳する練習をしていました。
--通訳の訓練を車内でされているということですね。
それが通訳なのかわかりませんが(笑)
--訓練としては同じ内容なんですよ。
とにかくひたすら聞きまくる。ただ「言うだけ」だったらたぶん誰でもできると思うのですが、抑揚が重要ではないかと。失礼な言い方かもしれませんが、中国人の方が日本語をしゃべると、日本語にはなっていてもイントネーションが違うと何を言っているのかわからない。そう考えると抑揚に尽きる。お手本になるのはCDで、とにかく真似る。家に帰ったらそれをもう少し大きい音を聞いて、自分の口で言ってみる。これを繰り返しました。
--Tさんの抑揚はすごくいい。物真似してるな、というのがよくわかる。そのコツはありますか?
どこで切って、どこで強めているか。そこを把握する。ひとつの文のなかで、どこで強く言い、どこで弱く言うか、それをよーく聞いて、あとはニュアンスを真似する。そこまで真似してやろうというのは自分の癖かもしれませんが、抑揚を捉えること。もちろん正確な発音も大事ですが、抑揚を重んじるとなると「どこが強い・弱い」をよく聞くと、「ここではこんな表現だな」というのがだんだんわかってくる。激音ではないけど、例えば「マシイッソッソヨ」(笑)。
--構造と同時に、ニュアンスも含めて捉えていく、ということですね。
そうでないと自分が喋る時にニュアンスが出てこない。自分はこう思っているけど、相手にそれがどう伝わっているかはニュアンスひとつでだいぶ変わる。先生がおっしゃるとおり、自分のなかでも重要視しました。
--息子さんにも英語の学習で、オーバーラッピング、シャドウイングを薦めていると聞きましたが?
この「りんどうむくげイズム」を、息子にも受け継いでもらおうと思いまして(笑)。自分が語学をまともに勉強したのは、中学高校の英語以外には初めてでした。英語を何年間か勉強したけど、結局喋れない。なぜか。口に出さないから。文体だけを追い、単語だけを覚えているから。韓国語を勉強するときはそれだけは避けよう、と。同じ轍は踏まない。話せるようにならないとコミュニケーションはとれないから。そのため「話すこと重視」でここに来たのです。
息子は中学生で、英語が苦手。漠然と単語を覚えるだけ、文法を覚えるだけだと、自分がどれだけ覚えたかはなかなかわからない。そうではなく、生きている言葉は喋って、話さないとわからない。息子にもそれをやらせようと、CD付きで、短い文がいっぱい載っていて、文法どおりに書いてある参考書を買ってきて、それを毎日、ひたすらやらせる。翌日には、前日に覚えた文を日本語で言うから、それを英語にしてもらう。
--ここでやっていることとまったく同じ(笑)
まったく同じです。でも息子のレッスンは毎日だから、タイトです。私は1週間余裕がある(笑)。わからなかったらチェックし、反復する。これを繰り返すと自然に英語ができようになる。しかも「日本語英語」ではなく、ちゃんとした英語が話せるようになる。どこにイントネーションがあるのか、どこに第一アクセントがあるのか。息子もなんとなくわかってきた。これは韓国語の習得に限らず、語学を学ぶ上でいちばん必要なことではないか。
おもしろい話ですが、こうして覚えた短い文章が、そのままの形で実際にテストでいくつか出てきた。それを見て息子が喜んでいました。「前、読んだやつじゃん!」と。その流れで勉強の仕方もわかってきた。下手に字を何回も書くより、「生きた英語」を覚えつつ頭に入れる。これがすごくいいなと思いました。
--良い例をありがとうございます(笑)。他の語学学校の研修はどうでしたか?
他の学校に通ってからここに来たという受講生、多いかと思います。ぼくは逆で、ここ以外は知らなかった。
--逆パターンですね。
他の語学学校に行っても話せるようにならなかった人は、実際どうやって教わっているのか見えなかった。実際に行ってみて、「なるほど、これでは話せるようにはならない」と実感できた。私が行った学校は、日本語で話さない。まず、ここがまずい。どういう内容・表現なのかの説明がすべて韓国語なので、日本人としてはニュアンスとか意味合いがわかりにくい。「これとこれの微妙な違いは何ですか」と訊いても、「意味は同じですよ」という程度の返事しか返ってこない。教科書はあるものの、教科書を使わずに授業が進むので、その日によって何をやるのかまったく読めない。
--予習ができませんね。
できないです。教科書ではこの辺をやっていると何となくわかるが、ただの一度も授業中に教科書を開いたことがない。30回、出席しましたが開かなかった。その場で先生が教えるけど、頭に入るわけがない。
典型的なのが「甘い、しょっぱい、味が薄い、辛い」など味覚に関する言葉。それぞれ説明はしてくれるけど、その場で「ではこれは何?」と突然問われても答えが出てくる筈がない。その日のうちに覚えさせようという考えかもしれないが、一気には覚えきれない。しかもそれを覚えて次回、復習するかといえば、まったく違うことを教える。自分がどれだけ習得できたかがわからない。発音も、細かく教えてくれない。いきなり連体表現が出てくる。私は1級を終えていたのでそれは理解できたけど、初歩の学習者にはわからないと実感しました。ある程度上級(3級とか4級)の方がそういう学校に行き、会話能力を強めるとか広げるために行くのはいいけど、初歩の学習者には何一つ得られるものはないと思う。しかも値段は、「りんどうむくげ」に比べて4倍くらい。高いですよ。会社負担でなければ行かなかった(笑)。
ネイティブの先生なので発音のチェックという点では良かったのかも知れませんが、語彙・文法を学びとろうとしたら、何十回も通いましたが重要な構文は数えるほどしか出てこなかった。高ければいいというものではないし、高ければ話せるというわけでもない。
「りんどうむくげ」で学ぶようになってから、多少なりとも話せるようになった。会社の近くの韓国料理屋に行って、まずは店員に積極的に話しかけることから始めた。1課の「イゴスン、ムオシムニカ?」しか知らないのに話しかけて、向こうは一所懸命、答えているのに、こっちは何を言っているのかわからない(笑)。ちょっとでも知っていると試したくなるんですね。この授業で、度胸がつきました。その店員さんとは電話でのやりとりが続いていて、週末に会話しています。今では、だいぶ話せるようになりましたね。
--当初、お店に行ったときと今とで、比較ができますね。
そうなんですよ。最初は「お代わり」もできませんでしたからね。「パッ!」(ごはん!)としか言えなかったんですよ(笑)。相手の方は「成長したな」と思われているんではないでしょうか。自分ではわからないですが。その方とは、電話すると10分間くらい韓国語で対話します。
--日常会話を、ですか?
日常会話です。「今日は忙しいの?」とか。
--一方通行ではなく、お互いに質問したり、やりとりできる? すばらしい(拍手)
その後、知人の紹介で、先月末から、韓国人の方と週1回、「地獄の3時間レッスン」(笑)を、レストランで食事をしながらしてます。お互い初対面だから、話題はたくさんあります。「兄弟は何人いるんですか?」とか。いろいろ探れるのでネタがある。共通の知人がいるだけなので、お互いにまだ知らない。「どの歌手が好きか」「どんな映画が好きか」「あれがおもしろかった」「これがおもしろかった」そうやって話題が広がっていく。気がつくと3時間が過ぎている。疲れるけど、気軽に喋れるので、時間が過ぎるのは意外に早く感じます。
--その場合のやりとりは、さきほどの電話での10分間トークと同じですか? つまりお互いに質問し、応答する?
そうですね。キャッチボールになってます。こちらが言葉が見つからず悩んでいると、相手の方が察してくれて「こういうこと?」と訊いてくれますし、こちらからも「もう一度、言って」とお願いすることがある。だからネタが尽きることがない。
韓国人の方はすごく話し好きなので、ひとつ話のネタを振れば、三つか四つになって帰ってくる(笑)。いま、お互いがわかってきたので、「あれについてどう思う?」「あの俳優はどうだ?」といった話ができるようになりました。
--話が広がっていますね。それは高い水準です。
必ずノートは持参し、わからなかったら「ソジュセヨ」と必ず書いてもらう。「これはこういうこと」と構文も書いてもらう。韓国語での説明がわからなかったら、そこは日本語で説明してくれる。
いま、「りんどうむくげ」に週一回来て、「チング」と週一回会って、週末に電話で10分間くらい会話してる。以前はそれにパルムハッキョもあったので週4回も韓国語と接していた。他の受講生よりも、韓国語に触れる機会が多いかな。
--お話を伺って、かなり力が付いていることを感じました。努力をされている。普通は1級終了段階では、言葉のキャッチボールまでできない。
こちらが思っている意志を伝えて、向こうが思っていることを汲み取る。いちおうお互いにわかっている気がするんです。
--発音、抑揚が、伝わる水準に達しているということですね。
それをやろうという気持ちになったのは、「りんどうむくげ」で学び取った構文がすべてです。それしかないです。他の教材から学んだことはなく、すべてはこのソウル大のテキストが礎になっている。他の学校で学んだことも自分のものにしているつもりはありますが、基本はこのテキストです。
--逆に言えば、このテキストで1級レベルを駆使できれば、キャッチボールはできることをご自身で証明してますね。ぼくも感慨深いです。
車の免許と同じで、「覚えたら使ってやろう」という気持ちが強いんです。お店の店員さんに始まり、韓国人の友人との付き合いへつながってきた。「覚えた韓国語を使いたい」という気持ちが強かったから、会話できるようになったのかもしれませんね。実際には、ネイティブの人と話す機会は受講生にはあまりないかと思いますが。
--ネイティブの人がいても、日本語の会話になってしまうそうです。そうではない、理想的な関係がつくれたわけですね。
店員さんにしても友達にしても、お金が発生しているわけではなく、ご飯をごちそうしている程度。ぼくは学ぶ環境が恵まれている。その分、成長しなきゃいけないのに「これでいいのか」と思うこともありますが・・・・
--すごい成長ぶりですよ! では最後に。2級に進級されたわけですが、今後の目標はどうお考えですか?
2級になると語彙も表現も増えると思いますが、2級が終わったら、ソウルに行ってみたい。何も持たずに、自分がどれだけ喋れるか、どれだけ通じるか試してみたい。自分の中のケジメとして。1級だけだと心細い(笑)。2級が終わってそこで初めて、韓国に行ってみたい。それが2級獲得の目標です。
--長期的な目標はどうですか?
別に通訳になりたいとまで思わないですが、仕事上、韓国語を読む機会があるので、スラスラ読んで把握できるようになりたい。そして韓国の方と仕事上の会話ができるようになりたい。そこが最終的な目標です。
--ビジネス韓国語の習得ということですね。
そのためには5級、6級まで進級しなければダメでしょうけど。
--現状の学習の積み重ね方なら、問題なく到達できると思います。非常に順調に進んでいます。
それは先生の教え方のおかげですよ(笑)。
--とんでもない。ありがとうございました。